ギリシャ神話に登場する吟遊詩人オルフェウス。
彼の者の奏でる竪琴の音色は、冥府の番犬ケルベロスはおろか、
冥王ハーデスの胸の中にまで響いたと言われている。
そして、その美しくも哀切な音色から
『オルフェウスのオルゴール』と呼ばれたオルゴールが在った。
そのケースに竪琴のシンボルが彫られていることから『オルフェウス』と呼ばれ、 丁寧に磨き上げられて組み上げられた機構からは、 眩く神々しい輝きを持つ音色と確かな存在感が存在していたと言う。
しかしそのように呼ばれたオルゴールや、 それを生み出すオルゴール技師を実際に知る人はおらず、 その存在自体が御伽噺だとも与太話だとも言われ、 時と共にその噂話すらも人々の記憶から薄れて行った。
そして時代は流れ。
録音技術の向上により蓄音機やラジオの性能は瞬く間に上昇し、 音楽鑑賞としてのオルゴールはその短い歴史に幕を下ろそうとしていた。
これはそこで紡がれた、名も無きオルゴール技師の物語。

